<殯の森> 

2007年 日本 97分
監督 河瀨直美
脚本 河瀨直美
撮影 中野英世
美術 磯見俊裕
音楽 茂野雅道
出演 しげき:うだしげき
   真千子:尾野真千子
   和歌子:渡辺真起子
   真子:ますだかなこ

奈良の山間部にある旧家を利用したグループホームに、認知症を患ったしげきは暮らしていました。 しげきは33年前に妻の真子を亡くしてからいつも真子のことを心にとどめて暮らしていましたが、認知症となった今、さらにその想いを強く抱え、真子と自分だけの世界の中に生きています。
その介護ホームに、事故で子供を失ったことで夫に離縁され、心を閉ざしている女性真千子が介護福祉士として入ってきます。 彼女もまた幼い子供を亡くしたのは自分の責任と強く思い込んで、亡き子への辛い思いを心に秘め、懸命に生きています。

日々過ごす中、真千子の中に真子を見たり、三十三回忌は仏様の世界に往かれる年と僧侶から聞いて心乱れるしげき。 
真子はいつまでも自分と共にあると感じているのです。

ある日仕事の後、ホームの片付けものを頼まれた真千子は、それぞれの部屋にゴミを取りに行きますが、しげきの部屋でゴミを探していてリュックを何気なく触ると、しげきに強く突き飛ばされてしまいます。 怪我をさせられ仕事への自信を失くしかけた真千子を、ホームの責任者和歌子は、「こうしなければいけないということはないから、だんだんやってけばいいよ」と、優しく励ましてくれるのでした。 

真千子が仕事に次第に慣れてきたある日、真千子の運転で、しげきと二人で車でしげきの妻の墓参りにいくことになりますが、途中で車が轍にはまってしまいます。 自分では如何することもできないので近くの民家に助けを求めに行く真千子ですが、その間にしげきは車を降りて一人で歩き始めてしまいます。

しげきの後を追い、始めは車に連れ戻そうとしますが、しげきの進むまま、森の奥深くにある真子の墓まで進んでいくのでした。 始めの内は追いかけごっこをしてしげきが何処からか持ってきたスイカを食べたりと、心配な面はあるものの楽しそうでもありましたが、森の奥に進むに従って何度も同じところを通り、道に迷ったり、雨に降られ足場が悪く、急な増水で水の中に嵌ったり、夜になると寒くて危険な状態になります。 
翌朝目覚めて、森の中で真子の幻とダンスを踊ったしげきは、元気を取り戻し、お墓にお参りをして今まで綴っていた日記をお供えするのでした。

このしげきと共に歩き出してから真子のお墓に辿り着くまでの道程の長いこと。 美しい自然と互いをいたわりあいながらのこの長い時間が二人の心に安らぎの時をもたらしてくれるかのようです。   

<殯の森>の殯(もがり)とは、敬う人の死を惜しみ偲ぶ時間、あるいはその場所を示す言葉で、語源は喪あがり(喪があけるの意味)なのだそうです。

真子のお墓の前で、一心不乱に土を掘り始めるしげきと横でそれを手伝う真千子。 そして墓に寄り添うように横たわるしげき、ありがとうと言う真千子の姿は感動的でした。
老いるということもテーマの一つのようですが、生とは何か、死とは何かを、観ているものに考えさせ、生と死とは繋がりを持っていると伝えてくれるドラマでした。
何気ない美しい風景の中に、登場人物の孤独と優しさを綴ったファンタジーのようでもありました。
C C  

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この記事へのコメント

オカダ
2007年06月11日 18:40
拙ブログにTBありがとうございました。
映像も内容も、とてもいい映画だと思います。
みのり
2007年06月12日 20:43
映像は美しいと思いましたが、何これ?と感じる人もいると思います。 カンヌでは字幕スーパー付きなのでしょうが、日本では字幕が無いので俳優の声が聞き取りにくくてわかりにくい所もありましたし…。 悪くは無いと思いますが、好きではありません。

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