<モロ・ノ・ブラジル> 

2002年 ドイツ・フィンランド・ブラジル ミカ・カウリスマキ監督 110分
30年前、ブラジル音楽のレコードとロックのレコードを交換して以来のファンだという、カウリスマキ兄弟の兄ミカが、ブラジル音楽のルーツを訪ねブラジルを旅して行く。 

まずペルナンゴ州アグアス・ペラス州にフルニーオ族を訪ね、音楽活動を通して部族の若者や家族を励まし伝統やヤーテ語なのどルーツを守っている様子を聞く。 
都会で色々な白人の音楽に触れるが、音楽は自分たちを忘れないためでもあるという。 インディオにとって音楽は大切で、歴史を伝える手段でもあるらしい。 
インディオによるダンスのはじまりが、トレー・デ・ブージオ、黒人文化との融合で、サンバが生まれ、これはフルーニオ族のリズムなのだとか。 500年前には500万人のインディオがいたのに、今は30万人になってしまったというのは寂しい。 

次に北東部ペルナンブコ、カルアルに行くと、路上演奏でハーモニカやアコーディオンそして見たことのないような手作りの楽器を演奏している。 
ブラジルは移民の宝庫で、文化が豊か、人種の坩堝。移民がそれぞれ独自の音楽を持ち寄って影響されあっているという。 特にアフリカやポルトガルの影響が強いのだそうだ。 

フォホーは、町のアイデンティティーで、ニューオルリーンズのブルースに匹敵するのだそうだ。 フォホーの歌手でフォホーを世界中に広めたジャシント・シウヴァと病気で会えなかったのは残念(その後亡くなってしまった)。

マラカトゥについても、本来は黒人の集会を意味したが、今は音楽の式典を意味しているとか…。 これはアフリカ文化が起源で、ペルナンブコの伝統音楽で、アフロブラジル人の宗教「カンドンブレ」の儀式や踊り、リズムと深く結びついている。 

フレーヴォは、農民が憩いの時間に農具を使って歌い踊ったのがはじまりで、参加者はカタリーナ、マテウメスバ、混血児、ダマ・ド・パソ、キング、クイーンの役をそれぞれ演じ、旗、太鼓、トローンボーン、サックス、クラリネットなども参加する。 ファンクやラップなどもエンボラーダから生まれたと言い、演奏してましたが、本当に究極のラップでした。 

次に訪ねるバイーア州サルバドールはカンドンブレの中心地で、ここでの演奏者(音楽家たち)はサンバを、神を呼び起こす祈りとか、宗教でありオリシャ(自然界)への信仰心として捉え、抽象的な世界と現実とを結んでいるという考えを持っているようだ。 いわれてみると確かに、太鼓が大地に響き渡り、もう一つの太鼓が霊感を与え、別の太鼓がそれを探し当て、さらに別の太鼓が受け止め演奏者と聴衆をトランス状態に持っていくというのが、解る様な気がします。 

映画からは少し離れますが、バイーアは、ストリート・サウンドが豊かで、ここには、リオとは別にバイーアのカーニバルがあり、1950年ころにはエレキギターを導入し、「トリオ・エレトリコ」というスタイルを確立しました。 しかもこれは、ロックンロールより早い時期だったといいます。 またサンバ・ヘギ(サンバ・レゲエのこと)やランバーダを生んだのもこの街なのです。 そしてアフリカ回帰を促す集団「アフォシェ」がカーニバルに登場したのも、この街が最初です。 

映画に戻りますが、旅の終わりはリオ・デ・ジャネイロ、ここではミカさんの友人の、本業仕立て屋の歌手ヴァウテル・アウファイアッチ(本名ルイス・カルロス・ダ・ヴィラ)、「シティ・オブ・ゴッド」でマネ役を演じた“ファロファ・カリオカ”の元リーダーで二枚目?(どういうわけか、皆がそう呼ぶのです。)ソロ歌手のセウ・ジョルジなどそれぞれの音楽に生きる人の音楽観や人生について語ってもらい、そしてライブ。 素晴しいー! 圧倒的で、迫力たっぷりです。 

ベルナンブコからバイーア、リオと4000キロに渡ってサンバ、ボサノバ、ポップ、ファンク、パンク、ラップ、宗教音楽のルーツを求めての旅は終わります。 
最後にたしかイヴォ・メイレリス(歌手で作曲家)という人の言葉だと思いますが、「皆、成功するとスラムを出て行ってしまうが、自分はスラムに残って意思を持って生きること、麻薬の売人にならなくても成功できることを、子供たちに教えたい。」と言っていたのが印象的でした。 

1960年代後半のリオ・デ・ジャネイロ近郊のスラム街で育った仲良し三人組の少年を中心に、心ならずも麻薬、暴力、犯罪に巻き込まれていく様子を、後にカメラマンになる心優しい少年ブスカベの目を通して描いた<シティ・オブ・ゴッド>を思い出し、この映画はかなり現実に近かったのだと改めて感じました。 
もう一つは<ブエナ・ビスタ・ソシアルクラブ>、これも<モロ・ノ・ブラジル>とは違うけど、楽しかったのを思い出しました。 
ミカ・カウリスマキ監督は、1989年以来、リオと故郷を行き来する生活を続けているということですから、この映画への打ち込み方も大変なものです。
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この記事へのコメント

2005年11月16日 17:19
大変細かく書かれているので、圧倒されました。観ている時にメモを取られているのでしょうか。僕のはほんの印象論。短評としてはこれでも良いのでしょうけれど。
みのり
2005年11月16日 21:45
この映画を見ているときは、訪れた都市などメモしたと思います。
若い頃ラテン音楽大好きだったのです。
もちろん今も好きですが…、だからとても興味深く見ました。

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    Excerpt: ☆☆☆(6点/10点満点中) 2002年ドイツ=フィンランド=ブラジル映画 監督ミカ・カウリスマキ ネタバレあり Weblog: プロフェッサー・オカピーの部屋[別館] racked: 2005-11-16 17:16