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<<   作成日時 : 2006/03/16 11:05   >>

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2004年 アメリカ 133分 
原題 Million Dollar Baby
監督 クリント・イーストウッド
脚本 ポール・ハギス
撮影 トム・スターン
音楽 クリント・イーストウッド
出演 フランキー・ダン:クリント・イーストウッド
   マギー・フィッツジェラルド:ヒラリー・スワンク
   エディ“スクラップ・アイアン”デュプリス:モーガン・フリーマン
   ショーレル・ベリー:アンソニー・マッキー
   デンジャー:ジェイ・バルチェル
   ホーヴァク神父:ブライアン・F・オバーン
   アーリーン・フィッツジェラルド:マーゴ・マーティンデール

ロサンゼルスのダウンタウンで17年前からボクシング・ジムを営んでいるフランキー。
ある日31歳のマギーという女性が、フランキーのジムに弟子入り志願にやって来る。
フランキーは、マギーが女性だということと年齢が行き過ぎていることで断るが、ミズーリの貧民街で生まれ、13歳からウェイトレスをし生計を立て苦労しているマギーにとって、ボクシングは唯一自分に誇れるものでした。
入門を断られても毎日懸命に一人で練習するマギーは、元ボクサーでジムの雑用係をしているフランキーの友人スクラップに才能を認められ、少しずつテクニックを教えてもらい、励ましに答えたマギーは上達していくのでした。

やがてフランキーもマギーの熱心さに絆され、トレイニングに力を貸すようになり、マギーの才能は開花しドンドン上達し、ミリオンダラーを稼ぐようになるのですが、ウエルター級チャンピオン“青い熊ビリー”との対戦中、休憩に入ってからビリーがマギーを後ろから殴り、マギーは首を椅子にぶつけて入院。
第一頚椎と第二頚椎を損傷したため、脊椎の働きを取り戻すことが出来ずに全身麻痺のまま人工呼吸装置をつけた生活を余儀なくさせられることとなります。

原作はフランキーと同じようにカットマンをしていたF・X・トゥールの同名小説。
この映画が公開された時、原作を読んだという友人が「とても良い小説だけど、可哀想過ぎて映画はとても観ることが出来ない。」と言っていました。
いくらアカデミー主要部門を独占したとはいえ、映画は基本的には楽しいものじゃないと観たくないので、始めから見たいとは思わなかったのですが、TV放映があったので鑑賞しました。
ところがこの映画を観て、なにも感動をしなかったのです。
私は、すぐに涙腺が緩んでくる方なので、人前で泣きたくないから悲しい映画は隠れてひっそりと観るのですが、全然涙を流すことなく終ってしまいました。
そんな自分に驚き、時間を置いて再度鑑賞。 やっぱり全然感動しないし、何処が優れているのか解りませんでした。

これって本当に映画史に残るような傑作なのでしょうか?
スクラップ役のモーガン・フリーマンが、フランキーの娘ケイティに語りかけるというやり方で物語が語られていますが、そのナレーションはとても味わい深くて良かったです。
スクラップとフランキーの長年連れ添った夫婦のような関係も楽しいし、養父に置いてけぼりにされたというデンジャーのアッケラカンとした性格、その存在を温かく見守るスクラップはこの物語の救いでした。 
ホーヴァク神父とフランキーの遣り取りも面白いと思いました。
だけどマギーが登り詰めていく前半と頚椎を損傷してからの後半というようにあまりにショックな出来事のためか、物語が大きくふたつに分かれて描かれているように感じてしまったのですが、それがどんなものなのか…。

まず、この程度努力する人は何処にでもいるし、だからといって成功できるものではないこと。
どんな人でも皆ギリギリのところで必死に生きているのです。
この映画では、マギーが努力している感じやメキメキ上達していくという感じが見ている私には伝わってこなかったし、フランキーと実の娘との関係も何故そんなことになったのかという肝心な所が一切描かれていません。
ほんの一瞬の出来事で取り返しのつかない事になりましたが、だからといってマギーを可哀想だなんて言ったらマギーに対して失礼だと思うのです。 
可哀想には違いないけど、そんなことを言ったからといってどうしようもないことだし、本人は同情されたくない筈。
マギーの母親や妹と弟は、とんでもなく自己中心的で無知な人達で、酷すぎるし…在り得ないと思うのですが、この描き方で見ているものに同情させたがっているようにも感じ、不快でした。

生きていることは寂しいということをフランキーとマギー(人と人との触れ合い、淡いけど強いといった)の二人の関係の中に描きたかったのかな〜。
そういえば見ている途中で子供の頃読んだ、森鴎外の「高瀬舟」を思い出しました。
どちらも貧しい人の話だし…と重ね合わせてしまいました。 
フランキーがマギーを安楽死させた後、病院を立ち去る後姿の演技が素晴らしかったですが、サバサバして後悔は無いけど…という寂しさが滲み出ているように思い、似てるかな〜と。

ツラツラ考えてみると、“ボクシング”“アイリッシュ”というのがポイントのようです。
ボクシングは死と隣り合わせのスポーツ、フランキーもマギーも名字はアイルランド系。
アイルランド系は移民としては後の方だし、プロテスタントが主流のアメリカでは非主流で、低所得層が多いこと。
フランキーがほとんど毎日通うケルト十字のアイリッシュ・カトリックの教会、解っていると思うのにクドクドと神父に質問するのは何故なのか?
ゲール語の本を読み、マギーに“モ・クシュラ(愛する人よ、お前は私の血)”というゲール語の書かれた(これの意味を知ったときは、泣かされましたが…)アイルランドの色のグリーンのシルクのガウンを贈ったこと。
もっと物語の背景を知っていると、見方も違うと思いますし、感動もしたのでしょうがよく解りませんでした。

でもこれを再び「高瀬舟」と併せて考えてみると、ボクシングに執り憑かれてしまった人とか、自分ではどうすることも出来ないことがあるのだということ、これは良いこれは悪いと一概に言えない、というようなことを綴ったと考えようと思いました。
どのように表現したかを観察出来たと思えば損ではないようにも思うのです。
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コメント(8件)

内 容 ニックネーム/日時
TB有難うございました。
「ミスティック・リバー」同様イーストウッドは哲学的になっています。人間世界の不条理といったところが共通するテーマで、一見割り切れない内容ですので、感動を見出すのは難しいですね。
人間や世の中というものは実に曖昧なものなんだよ、という主張には感じ入るものがあるのですが、懲りすぎてバランスが悪くなったり、もたれたりする感があるのです。そう感じるのは恐らく自分の修行不足のせいですが、難解であることは否めません。イーストウッドを観るには、フェリーニやベルイマンと同じスタンスで見る必要があると痛感する今日この頃。格闘しなければならない作品群です。
オカピー
2006/03/16 18:11
「高瀬舟」の感覚はわかりやすかったので、アメリカ人と日本人との感覚の差かな〜などとも思いました。
このごろ古い日本映画を観て心情が解るな〜なんて年寄りじみたことを考えています。
みのり
2006/03/16 23:35
TBサンクスです!
これはなかなかいい映画だと思いました。私は主人公2人の淋しさと絆に共感できました。
チュチュ姫
2006/03/24 00:45
お久しぶりです・・・
体調でも崩されましたか(・・?)
この記事の感想はかなり手厳しい・・・(^^);

“人との深い関与を苦手とするフランキー”が印象的でした.

>生きていることは寂しいということをフランキーとマギー(人と人との触れ合い、淡いけど強いといった)の二人の関係の中に描きたかったのかな〜。
この映画で感じたのは,みのりさんの言葉を借りると↑のところです.

>フランキーと実の娘との関係も何故そんなことになったのか・・・
確かに過去と未来が描かれていない映画.
なかなか感情移入はできないですよね〜(^o^)
しゅー
2006/03/26 16:16
しゅーさん、コメントありがとうございました。
半年振りに山小屋に遊びに行ったり、日々の雑用でなかなか感想文を書けていません。
しゅーさんも、このところゆったリ気味のアップですね。
お忙しいのかな〜と思っていました。

さてこの映画、評判が良すぎるようなので、あえて辛口になったのかもしれません。
他の方の感想を読ませていただくと勉強になります。
一年位前に、しゅーさんの映画評を読んだような記憶があるのですが、感想を書いてから、探したのですが、見つかりませんでした。 もう一度探してみます。

>“人との深い関与を苦手とするフランキー”が印象的でした.
そんな不器用さが、娘さんと上手くいかなくなってしまった原因のひとつなのかもしれませんね。
みのり
2006/03/27 11:20
こんばんはっ!
>しゅーさんも、このところゆったリ気味のアップですね。
ええ,年度末は毎年かなりハードです.
そして,年々,その厳しさが増しています(^^);
でも,今年の嵐も,やっと,過ぎ去りました♪

>探したのですが・・・
え〜と,自己紹介のところのリストをクリックすれば見れるようになっています!
つたない文章ですが・・・(^^);
しゅー
2006/03/28 00:34
しゅーさん、表紙に出ていましたね! いつも新着記事から入っていくので言われるまで気付きませんでした。 なんておバカなんだろうと、自分でガッカリです。

みのり
2006/03/29 19:55
TBありがとうございました。
最後の病院を立ち去る後姿のよかったですね。
maimai
2007/08/16 21:43

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